DGX(Digix Gold)とは?終了の経緯と金連動トークンの今

DGX(Digix Gold)とは?終了の経緯と金連動トークンの今

暗号資産(仮想通貨)にはさまざまな種類が存在しますが、その中でも価格変動を抑える工夫がなされた「ステーブルコイン」は、特に注目度の高い分野です。今回は、その中でも「ゴールド(現物の金)」を裏付け資産とするステーブルコインの先駆けとして知られた「DGX」について解説します。

【重要】
DGXの発行元であるDigix社は、2023年3月21日に事業を停止しています。2026年10月時点で、DGXを新たに購入したり、通常の方法で利用したりすることはできません。本記事では、DGXの仕組みとサービス終了の経緯、そして現在利用されている主な金連動トークンを紹介します。投資や保有を検討する場合は、必ず最新の公式情報や取引所の利用規約、専門家のアドバイスなどを参考にした上で自己責任で行ってください。

結論から言うと、DGXは「金をブロックチェーン上で扱う」という試みとしては先進的でしたが、発行元の事業停止によって役目を終えました。現在、金に連動するトークンとしては、テザーゴールド(XAUT)やパックスゴールド(PAXG)が世界の市場の大半を占めており、日本国内ではジパングコイン(ZPG)が取引所で売買されています。DGXの事例は、「金に裏付けられていても、発行元の事業が続かなければ使えなくなる」というリスクを示しています。

目次

DGXとは?

DGX(Digix Gold Token)は、1トークンあたり1グラムの金(LBMA認定の金地金)を担保として発行されていたステーブルコイン(暗号資産)です。発行元であるDigix社は、シンガポールを拠点としており、専門の保管庫で金を保管し、その証明としてDGXを発行していました。

項目内容
正式名称Digix Gold Token
通貨単位DGX
発行元Digix社(シンガポール)
裏付け資産金(1DGX=1グラム)
ブロックチェーンイーサリアム
現在の状況2023年3月に発行元が事業を停止

発行の背景

  • 価格の安定性
    ステーブルコインは通常、法定通貨(例:米ドルなど)を担保としますが、DGXは金を担保とすることで、金の価格変動を背景としつつ、伝統的に「価値の保存手段」として認められてきた金の安定性を取り入れようとしました。
  • ブロックチェーンの活用
    Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンを利用し、トークンとして発行されていたのが特徴です。金に対する所有権を、より簡単にデジタル上で扱えるようにすることを目指していました。

DGXの仕組み

ここでは、DGXが提供されていた当時の仕組みを紹介します。現在の金連動トークンも、基本的には同じ考え方で作られています。

ゴールドとの連動

DGXは「1トークン = 1グラムの金」というレートで発行されていました。つまり、DGXを保有するということは、裏付けとなる現物の金の一部を保有していることを意味していました。

保管と監査

  • 保管場所
    Digix社は、第三者の保管機関と連携して金を保管していました。主にシンガポール国内の厳重な金庫で管理されていました。
  • 監査と証明書
    保管されている金は定期的に監査を受け、その結果が公開されていました。これにより、「発行されているDGXの枚数」と「実際に保管されている金の量」が一致していることを示す仕組みでした。

交換・換金

  • 金への交換
    一定の条件を満たせば、DGXを発行元を通じて現物の金に交換できる仕組みがありました。ただし、現物引き出しには手数料や最小単位などの制約がありました。
  • 仮想通貨との交換
    DGXは一部の暗号資産取引所で取り扱われ、他の暗号資産(例:イーサリアム、ビットコインなど)と交換できました。ただし、取り扱う取引所は少なく、流動性は高くありませんでした。

Digixのサービス終了の経緯

Digixは、金をブロックチェーン上で扱うプロジェクトの草分けでしたが、数年をかけて段階的に事業を縮小し、最終的に事業を停止しました。主な出来事は次のとおりです。

  • 2020年1月:Digixの運営方針を決める組織「DigixDAO」の解散が決まり、ガバナンストークンDGDの保有者に、保管されていたETHが返還される
  • 2021年6月:大手取引所BitfinexがDGXの取り扱いを終了
  • 2022年9月:Digixがすべての事業の停止を発表し、シンガポールの決済サービス法に基づくライセンスも取り下げ
  • 2023年3月21日:Digixが事業を停止。DGXの償還(金や現金との交換)の窓口は、海外の提携先であるNexusGold社に引き継がれたと告知

DGX自体は金に裏付けられていましたが、取引量が少なく、取り扱う取引所も限られていたため、事業として続けることが難しくなったとみられます。DGXのように、一時は話題になりながら姿を消した金連動トークンは、ほかにも数多く存在します。

DigixDAOとDGDとは

Digixのプロジェクトには、金に連動するDGXとは別に、「DigixDAO」という組織と、そのガバナンストークン「DGD」がありました。DigixDAOは2016年にトークンの販売で資金を集め、DGDの保有者が投票でプロジェクトの方針を決める仕組みでした。DGXの手数料収入の一部がDGDの保有者に還元される設計とされていました。

しかし、2020年1月に保有者の投票でDigixDAOの解散が決まり、DGDは焼却され、DigixDAOが保管していたETHは保有者に返還されました。報道によると、返還された資金は数千万ドル規模にのぼります。DGXの発行はその後も続きましたが、DigixDAOの解散は、プロジェクト全体が縮小に向かうきっかけの一つになりました。

なぜ多くの金連動トークンが姿を消したのか

金連動トークンを運営するには、金の保管料や保険料、定期的な監査の費用などがかかり続けます。発行量が少ないと、こうした費用に見合う収益を得るのが難しくなります。また、利用者は「本当に金が保管されているか」を発行元の情報開示に頼るしかないため、知名度や信頼の低い発行元にはなかなか資金が集まりません。さらに、各国で暗号資産や決済に関する規制が整備されるにつれ、ライセンスの取得や維持の負担も大きくなりました。

こうした事情から、金連動トークンの市場は、大手の発行元が提供する一部のトークンに集中していく傾向があります。

DGXを持っている場合はどうする?

Digix社の告知によると、事業停止後の償還に関する問い合わせは、提携先のNexusGold社が受け付けるとされています。ただし、2026年10月時点で、この窓口が現在も利用できるかは確認できませんでした。DGXを保有している場合は、Digix社の公式の告知を確認したうえで、償還の窓口に直接問い合わせる必要があります。

なお、終了したプロジェクトのトークンを持っている人を狙い、「高値で買い取る」「償還を代行する」などと持ちかけて秘密鍵や手数料をだまし取る詐欺もあります。公式以外の窓口からの連絡には応じないようにしましょう。

DGXが目指したメリット

  1. 安定性の期待
    金の価値を裏付けとするため、暗号資産の中でも比較的ボラティリティが低く、資産保全に向いているといわれます。
  2. 分割保有が可能
    実際に金を購入すると、インゴットなどの形で大きな単位からしか買えないことが多いですが、DGXであれば1グラム単位、さらには小数点以下のトークンも保有できます。
  3. ブロックチェーン上の透明性
    発行枚数やトランザクションがブロックチェーン上で記録・公開され、監査によって物理的な金保有量との整合性も確認されます。

これらのメリットは、現在の金連動トークンにもそのまま当てはまります。DGXはこうした考え方を早くから形にしたプロジェクトでした。

DGXの注意点と、金連動トークンに共通するリスク

  1. 金価格の変動リスク
    DGXは法定通貨ではなく金を担保としているため、金市場の価格変動がトークン価値に影響を与えます。必ずしも1トークン1ドル相当を維持するわけではない点に留意が必要です。
  2. 取り扱い取引所の限定
    すべての暗号資産取引所で扱われているわけではありません。取引所によっては取り扱いがない場合や、流動性が低い場合もあります。
  3. 規制リスク
    国によっては金や暗号資産に対する法規制が異なり、保有や取引に制限がかかる場合があります。常に最新の法令やガイドラインを確認しましょう。

DGXの事例からは、さらに次のようなリスクも学べます。いずれも、現在の金連動トークンを利用する際に確認しておきたいポイントです。

  • 発行元の事業継続リスク:金が保管されていても、発行元が事業をやめれば、トークンは取引所で売買できなくなり、償還の手続きも限られます。
  • 償還の条件:現物の金に交換するには、大きな最低単位や手数料、受け取れる地域などの条件があり、個人が少額で金を受け取るのは難しい場合があります。
  • 流動性の低さ:取引量が少ないと、売りたいときに適正な価格で売れないことがあります。

現在の主な金連動トークン

DGXに代わって、現在は次のような金連動トークンが使われています。世界の金連動トークンの市場は約50億ドル規模とされ、その大半をテザーゴールド(XAUT)とパックスゴールド(PAXG)の2つが占めています。

項目テザーゴールド(XAUT)パックスゴールド(PAXG)ジパングコイン(ZPG)
発行元TetherグループPaxos社(米国)三井物産デジタルコモディティーズ(日本)
1トークンあたりの金1トロイオンス1トロイオンス1グラム相当
金の保管場所スイスロンドン―
時価総額の目安約27億ドル約19億ドル小規模
国内取引所での取り扱いなしなしあり

※時価総額は2026年9月時点の目安です。1トロイオンスは約31.1グラムです。

2025〜2026年に金連動トークンが注目された理由

2025年は金の価格が大きく上昇し、金連動トークンの取引も活発になりました。たとえばXAUTは、報告書によると裏付けの金が2025年末の約52万トロイオンスから2026年3月末には約70万トロイオンスへと増えています。暗号資産の取引所で24時間いつでも金を売買できることや、米ドル連動のステーブルコインと同じ感覚で金の価値を送金できることが、暗号資産の利用者を中心に評価されたとみられます。

テザーゴールド(XAUT)

米ドル連動のステーブルコインUSDTで知られるTetherグループが発行する金連動トークンです。1XAUTが1トロイオンスの金に裏付けられており、金はスイスの保管庫で管理されています。2026年に入って発行量が大きく増え、金連動トークンの中で最大の規模になりました。現物の金を受け取るには、430XAUT以上などの条件があり、受け取り先もスイス国内に限られるとされています。発行元は米ドル連動のUSDTと同じグループのため、グループ全体の信用や、各国の規制の動向にも注意しておきたいところです。

パックスゴールド(PAXG)

米国のPaxos社が発行する金連動トークンです。1PAXGが、ロンドンの保管庫にある金地金(ロンドン・グッド・デリバリー・バー)1トロイオンス分に裏付けられています。金地金そのものとして受け取るには430PAXG以上が必要で、受け取り先は英国内の保管庫に限られます。Paxos社は米ニューヨーク州の信託会社として規制を受けており、情報開示の面で評価されることが多い発行元です。

ジパングコイン(ZPG)

三井物産グループの三井物産デジタルコモディティーズが発行する、金価格に連動する国産の暗号資産です。1ZPGが金1グラムの価格に連動するよう設計されており、日本円で売買できます。国内の複数の取引所で取り扱われており、2026年4月にはGMOコインも取り扱いを始めると発表しました。同じ発行元から、銀に連動する「ジパングコインシルバー(ZPGAG)」や、プラチナに連動する「ジパングコインプラチナ(ZPGPT)」も登場しています。

ジパングコインは、現物の金と交換することを前提としたトークンではない点がXAUTやPAXGと異なります。国内の取引所で日本円のまま気軽に金価格への投資ができる一方、取引所での売買価格には売値と買値の差(スプレッド)がある点に注意しましょう。

金連動トークンの使い道と選び方

主な使い道

  • 暗号資産の値動きへの備え:ビットコインなどが大きく下がりそうなときに、資金の一部を金連動トークンに移しておく
  • 24時間の金取引:金の市場が閉まっている夜間や週末にも、金の価格に連動した売買ができる
  • 少額からの金投資:トークンを小数点以下の単位で買えるため、数百円〜数千円程度から金に投資できる
  • 金の価値の送金:ブロックチェーンを使って、金の価値を海外にも短時間で送れる

選ぶときのチェックポイント

DGXのような事態を避けるためにも、金連動トークンを選ぶときは次の点を確認しましょう。

  • 発行元:どの国の規制を受けている企業か、事業の実績はどれくらいあるか
  • 監査・報告:保管している金の量を、第三者がどのくらいの頻度で確認しているか
  • 保管場所:金がどこの保管庫で、どのように管理されているか
  • 償還の条件:現物の金や現金に交換できるか、最低単位や手数料、受け取れる地域はどうか
  • 取り扱いと流動性:利用できる取引所が十分にあり、取引量があるか

国内で売買できるジパングコインは、日本の取引所で日本円を使って取引でき、利用者の資産は国内の制度に沿って管理されます。海外のトークンを使う場合は、海外取引所を利用するリスクも含めて判断しましょう。

DGXの将来性と、金連動トークンの今後

DGX自体は事業を終えましたが、DGXが目指した「金をブロックチェーン上で扱う」という考え方は、現在の金連動トークンに受け継がれています。

  • デジタル資産と現物資産の橋渡し
    DGXのようなゴールド担保型ステーブルコインは、暗号資産の利便性を享受しつつ、従来の実物資産の安定性を組み合わせるというアプローチが特徴です。
  • 投資多様化の選択肢
    通常、金へ投資する場合は現物保有やゴールドETFなどの手段が一般的ですが、DGXのようなトークンはブロックチェーン上での取引を可能にし、投資の多様性を広げる可能性があります。
  • 課題も存在
    世界の金連動トークンの市場は約50億ドルと、金の市場全体のごく一部にとどまっています。流通量や対応取引所の限定、規制面での不確定要素などもあり、普及にはさらなる整備が必要とされるでしょう。

なお、金の価格は2025年に大きく上昇し、一時は1トロイオンスあたり5,500ドルを超えました。その後は調整が進み、2026年10月中旬時点では4,100ドル前後で推移しています。金連動トークンは金の価格にそのまま連動するため、金が値下がりすればトークンの価値も下がる点は理解しておきましょう。金とビットコインの違いについては、金とビットコインの違いを比較|デジタルゴールドと呼ばれる理由で詳しく解説しています。

金に投資する方法の比較

金に投資する方法は、金連動トークン以外にもいくつかあります。目的に合わせて選びましょう。

方法特徴主な注意点
現物(地金・金貨)手元に金そのものを持てる保管の手間や盗難リスク、売買時の手数料
純金積立毎月少額から買える年会費や購入手数料がかかる場合がある
金ETF証券口座で株式のように売買でき、NISAで買えるものもある信託報酬などのコスト
金連動トークン24時間売買でき、ブロックチェーン上で送金・利用できる発行元のリスク、取引所の取り扱い、税金が暗号資産と同じ扱い

長期的な資産形成として金を持ちたい場合は、金ETFや純金積立のほうが手軽で、税制面でも有利になることがあります。一方、暗号資産と組み合わせて使いたい場合や、ブロックチェーン上で金の価値を移動させたい場合は、金連動トークンが選択肢になります。どの方法でも、金の価格そのものの変動は避けられないため、資産の一部として長期的な視点で持つのが基本です。

金連動トークンの税金

ジパングコインやXAUT、PAXGなどの金連動トークンは、日本では暗号資産として扱われます。そのため、売却や交換で得た利益は、原則として雑所得として総合課税の対象になり、住民税と合わせて最大で約55%の税率がかかります。現物の金を売った場合の譲渡所得や、金ETFの申告分離課税とは扱いが異なる点に注意しましょう。

DGXに関するよくある質問

DGXは今でも買えますか?

買えません。発行元のDigix社は2023年3月に事業を停止しており、主要な取引所でもDGXの取り扱いは終了しています。金に連動するトークンを買いたい場合は、国内ならジパングコイン(ZPG)、海外ならXAUTやPAXGが主な選択肢です。

DGXとDGDの違いは何ですか?

DGXは金に裏付けられたトークン、DGDはDigixの運営方針を決める組織「DigixDAO」のガバナンストークンでした。DigixDAOは2020年に解散し、DGDの保有者にはETHが返還されています。

金連動トークンはステーブルコインですか?

資産に裏付けられて価値が連動するという意味では、ステーブルコインの一種とされることがあります。ただし、連動するのは米ドルではなく金の価格のため、金の値動きに合わせて価格は上下します。「価格が一定」という意味での安定性はありません。

日本で金連動トークンを買うには?

国内では、ジパングコイン(ZPG)を取り扱う暗号資産取引所で、日本円を使って購入できます。XAUTやPAXGは国内の取引所では取り扱われていないため、購入するには海外の取引所を利用する必要があり、日本の法律による保護を受けられないリスクがあります。

XAUTとPAXGはどちらがいいですか?

どちらも1トークンが1トロイオンスの金に裏付けられており、仕組みは似ています。違いは主に発行元と金の保管場所で、XAUTはTetherグループが発行しスイスで保管、PAXGは米国のPaxos社が発行しロンドンで保管しています。利用したい取引所で扱われているかや、発行元の情報開示の内容を比べて選ぶとよいでしょう。

ジパングコインは現物の金に交換できますか?

ジパングコインは、金価格に連動する暗号資産として国内の取引所で売買するもので、現物の金と交換することを前提とした仕組みではありません。現物の金を手元に持ちたい場合は、地金や金貨の購入、純金積立などを検討しましょう。

金連動トークンの価格はどう決まりますか?

基本的には、裏付けとなる金の国際的な価格に連動して動きます。ただし、取引所での売買価格は需要と供給でも決まるため、取引量が少ないトークンでは、金の価格と多少ずれることがあります。日本円で見る場合は、ドル円の為替レートの影響も受けます。

まとめ

DGXは「金を担保としたステーブルコイン」として、暗号資産の技術的な利便性と金が持つ相対的な価値安定性を組み合わせたユニークなプロダクトでした。しかし、発行元のDigix社は2023年3月に事業を停止しており、現在は利用できません。

  • DGXは1トークン=金1グラムに裏付けられた、金連動トークンの先駆けだった
  • Digix社は2022年に事業停止を発表し、2023年3月に事業を終了。償還の窓口は提携先に引き継がれた
  • 現在の主な金連動トークンは、海外ではXAUTとPAXG、国内ではジパングコイン(ZPG)
  • 金に裏付けられていても、発行元の事業継続や償還の条件、流動性のリスクがある

金の変動リスクはあるものの、金連動トークンは法定通貨担保型のステーブルコインとは異なる選択肢を提供しています。利用する際は、DGXの事例も踏まえて、発行元の信頼性や取り扱いの状況を確認するようにしましょう。

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